2012年に発覚し当局に処罰を受けた米国独禁法違反に因る影響は、雪崩を打ったかのようなお客様との関係悪化のみならず、御仕入先様や金融機関との関係性も大きく損ない且つ其之渦中で傍楽(はたらく=傍を楽にする)仲間達を虐げてきた結果、大幅な受注減延いては新規注文停止、融資見合わせ、そして200人以上の傍楽仲間達が心為らずも我が社を去るような異様な事態を招き、2016年には特に所謂「資本・資金・訴訟」の問題から実質倒産状態に陥っていたのが当時のダイヤモンド電機でした。ゆえに、卑小乍らも荒野の用心棒を自認していた私は、塗炭の苦に喘ぐダイヤモンド電機砦の人々の怨嗟の声を聴き、次いで創業一族の懇請を受け、此れを天意と決意、実質オーナーとしての全権を条件に2016年6月24日開催定時株主総会にて修正動議を以て会社を傍楽仲間達のもとに取返し、自ら社長に就任したのです。
此之劇的に為らざるを得なかった社長交代劇は、即ち其之株主総会を以てダイヤモンド電機が生きるか死ぬか、もはや一刻の猶予も許され無かったことを雄弁に物語ってくれています。為ればこそ、企業再生処か蘇生から始めねば為らなかった其之端緒、初太刀として、其之株主総会翌日から土日を利して先ず以て取組むべき「資本・資金」の問題解決に向け、出逢ったばかりで戸惑い乍らも私の【仁・信・義・勇・礼】に基づく使命感に早速に共感し始めてくれた傍楽仲間達の大いなる不安と小さく灯った仄かな希望を全身全霊で受け容れ、現状を佳く聴き佳く訊き、其之上で今為すべき大事を具体的に指し示し、来るべき闘いに備えていました。
而して、傍楽仲間達が、更に其之翌週の6月4日に策定 することに為る【社長三大方針】の其之一【お客様要求品質第一に徹する】に則り今一度ダイヤモンド電機の傍楽仲間達としての誇りを取り戻して「ものづくり」に専念出来得るべく、一身を以てメインバンクを中心とした各金融機関様要職方々と胸襟を開き腹蔵無く肝胆照らし合わせて気魄漲し懇談、至誠通天、各金融機関様と今に至る堅牢為る紐帯並びに強固為る資金基盤得る叶うことと相成りました。
梅雨が明け、例年よりも異様に熱く感じられた此之夏は、総てのお客様、そして、後に【All Diamonds(オールダイヤモンズ)】として我が社のサプライチェーンの中心に為って下さる取引先持株会にも加入して下さっている御仕入先様総てを、皆様方の不信と不安を払拭し理解を得る為自ら御訪問申し上げました。過去のこととはいえ、過去・現在・未来に責任を持つべき社長としての衷心からの謝罪、そして人々を大切にする経営を以ての再生への不退転の決意を語り、其之事を皆様方に受け止めて頂いた時のことは、今も安堵の気持ちと共に想い出し、衷心からの感謝の気持ちが湧き上がります。
そして、勿論、独禁法違反。真摯に省み乍らも其之甚大な影響からの脱却もまた、先述したように喫緊の課題、急務で有りました。由って、初秋には米国に飛び、独禁法違反に纏わる事案解決の為、其之場に居た私以外の皆が脂汗滲ませ乍ら疲労困憊に陥る十数時間に渡る折衝を、使命感に基づいた気魄を以て闘い抜き、今に至る事態終息への緒戦と為すこと叶うたのです。
此之間、私の社長就任後に退職するおおよそ総ての退職者と面談を実施今も退職者面談は採用面接同様必ず実施)、長かった彼等彼女等の苦衷を斟酌し、顔は強面声は胴間声も、出来得る限りやさしく声を掛けそっと送り出す一方、いつでも帰って来いよ(社長就任当初に制定したウェルカムバック制度)と伝え続けました。また、一親等の家族を喪うた傍楽仲間達とは都度弔意面談を実施し年末には献杯を行う等、傷ついた傍楽仲間達の心を、半減されていた賞与及び昇給制度の復活と共に癒し、会社の信用延いては信頼及びバランスシート同様、少しづつ、少しづつ回復させていました。
また、新たな時代に対応し、激動の時代を生き延び生き残る為、経営理念にも謳う【多面体に耀き傍楽仲間達】としてベテラン採用及び役職定年廃止、無論、女性や外国人の傍楽仲間達の採用、登用も漸進させて参りました。企業再生とは同時に、【人々の再生物語】でもあるからです。
其之後、同年10月に経営理念刷新及び委任型執行役員制度への移行、以降は、点火コイル世界一宣言、インドネシア工場設立、優先株処理や複雑な商流根絶同様社長就任当初から決めていた原点回帰の本社集約、監査等委員会設置会社への移行、我が社の憲法で有る【経営計画書】策定、EV向け高機能製品の開発及びリリース、ルクセンブルク営業拠点開設、と矢継早に手を打ち、上記採用や登用と同時に当時は月例での社長訓示や社長道場、世界QCサークル大会での表彰に於いて各国の言語(英語は無論、拠点の設立順でハンガリー語、中国語、ヒンディー語、タイ語)で表彰状を読み上げる等、新たな企業文化をつくりあげてゆきました。迎えた2018年秋、単独株式移転に依り純粋持株会社設立(ホールディングス化)、そして(旧)田淵電機の救済仲間化へとつながってゆきます。
1925年(大正14年)創業、旧ダイヤモンド電機よりも長い社歴を誇っていた2018年当時の田淵電機は、東証一部上場(当時)にまで躍進しながらもパワーコンディショナの米国市場からの撤退に伴う減損処理、そしてFIT(太陽光発電の固定価格買取)等国内市場の縮小に伴う大幅な損失計上から、2018年6月には残念乍ら倒産の一種である事業再生ADR を申請。「人も会社も行き着く処迄ゆかねば変われない」、旧ダイヤモンド電機蘇生でも再認識した私の経験に基づく持論で有りますが、旧田淵電機も正に「息尽く」一歩手前、否、一息手前、でした。
なにゆえ、事業再生ADRを申請し再建を目指し乍らも、もはや「息尽く」一息手前なのか。それは、聞こえてくるところによれば、事業再生ADRの成否に於いて債権者方々の理解の為にも非常に重要なスポンサー候補である18社もの事業会社やファンド等が手を挙げては下ろし、手を挙げては下ろし…、それらの企業様皆が皆がかは存じませぬが、其之大半がある事情に苦慮し或いは匙を投げ、事業再生を諦めたというのです。耳を傾けて佳く聴けば、それは残念ながら、本来ならば誰よりも当該企業並びに傍楽仲間達を愛し、其之為にも同じく誰よりもお客様や御仕入先様、金融機関様、総てのステークホルダーを大切にすべきはずの創業家、其之負託を受けた経営者達の存在でした。
我が社を私事とすることと、我が社を私する、では無論似て非なり、天地の開きが有ると言えます。会社は、まして上場企業為ればそれはまごうことなく「公器」で有り、会社の危急存亡は、総てのステークホルダーに関わる一大事です。此之事に何ら想いを馳せることの無い、斟酌すれば最初はきっと責任感から生じたはずの其之愛情や忠誠が、貧すれば鈍すにて偏り、もはや所有欲や偏愛としか云い様の無い理性の欠如に因る停滞が、会社の存続、傍楽仲間達の安全及び安心を更に危うくしていたのです。
事業再生ADRを申請したとはいうても民事再生手続き迄の時間は僅か3ヶ月、そして、私が此之事業再生もまた、世の為人の為で有ると馬首を巡らせたのは、もはや民事再生手続き迄一ヶ月半、盛夏の頃でした。僅かな期間、且つ何よりも極僅かな面談乍ら、時には一対一で懇々と道理を説き、時に丁寧に時に厳しく説諭し、最後には先述したような其之本来の理解を得て合意に至り、そして、民事再生手続き開始4日前という劇的なタイミングで救済仲間化を確定させること叶うたのです。其之後、経営理念及び経営計画書、社長三大方針に基づいたグループ内の文化的融和、新たな傍楽仲間達の理念の理解と貢献が新旧傍楽仲間達を相互に扶助し乍ら、約1年半でのADR債務の完済を果たし、(結果的には一旦の)再生を果たしたのです。
其之後遭遇した世界の在り様を一変させたコロナ惨禍での苦闘の詳細は次回に譲りますが、此之困難之季を、多くの方々が亡くなられたなかで軽々に「ピンチをチャンスに」とは申さずとも、公器として、此之困難の季を生き延び、存続延いては永続することで、経営理念の追求及び実現を果たし、私達が暮らす社会に対して其之責務を果たさねば為らぬと定め、コロナ惨禍を斬り抜け「ニューノーマル=新常態」の時代にも「サステイナブル=持続可能」な成長を描く新たなビジョンを掲げた中長期経営計画【DSA2021 再点火反転攻勢版】に連戦猛進して参りました。苦難の嵩は皆同じ、左様心得、ほんの少しづつでも人々の不安を解消し、勇気付けるような手立ても施して参りました。但し、2020年夏、「しんどい時に弱いところが出る」、其之結果として無念のうえに無念も、募らざるを得なんだ希望退職のことを、去らざるを得なんだ傍楽仲間達のことを、片時も忘れることは有りません。其之想いも胸に、今、最後の十完歩、言い換えれば ”The Darkest hour” 即ち夜明け前の最も暗い闇のなかを、水底に沈み腐った一粒の炭素に為り果てていたダイヤモンドが多面体為る己の耀きを道標とし、サバンナのどまんなかで四肢を圧し折られハゲタカやハイエナの餌に為りかけていたゼブラが地球環境に資するべく疾走し、練達の手先で有るクラフトも仲間化して駆け抜けようとしています。
【DSA2021 再点火反転攻勢版】で掲げた【車と家をものづくりでつなぐ】に基づく中長期経営目標「2023年3月期売上高1,000億円」には無念乍ら今一歩及ばずとも、同じく必達目標と定めた、自動車機器事業「点火コイル世界シェアNo.1」、エネルギーソリューション事業「住宅用蓄電システム国内シェア1位の堅持」、電子機器事業「国内インバーターエアコン用リアクター市場シェア1位」並びに「主要お客さま内占有率トップ3獲得」についても到達未達のばらつきは有るも鮮やかほど明確に視界を得ています。また、今春には、2017年春に着想を得て開発してきたProject A、即ちアンモニア燃焼技術開発の成果を発表、地球環境に資する此之技術を更に深め且つ拡げるべく、協業含め多くの同じ志を有する企業や組織と共に取り組んで参ります。
今後も、ダイヤモンドエレクトリックホールディングスは、経営理念に謳いあげたように、「ものづくりを通じてお客様の発展に寄与し社会の豊かさに貢献」すべく、「お客様要求品質第一に徹する」ものづくり企業として、多面体に耀き疾走する仲間達一致して、現業の改善並びに地球環境に資する独自の技術開発に連戦猛進して参ります。
