電解コンデンサレス技術

Innovation 04

斬新で“尖った”技術を開発したい。
若手メンバーの熱意が結実した「電解コンデンサレス技術」

  • ダイヤゼブラ電機株式会社
    CTO室 フェロー
    権瓶 和彦さん
  • ダイヤモンドエレクトリックホールディングス株式会社
    常務執行役員 CTO
    森 信太郎さん
  • ダイヤゼブラ電機株式会社
    CTO室 チームリーダー
    畑岸 幸浩さん

社を挙げてV2Gへの取り組みを推進する上で
不可欠な「電解コンデンサレス技術」に着手

そもそも電解コンデンサレス技術とは、どういったものなのでしょうか。

畑岸

電気自動車用充電器や家庭用蓄電システム、パワーコンディショナには「インバータ」と呼ばれる装置が搭載されています。その「インバータ」の中には大容量の「コンデンサ」が組み込まれており、一般的には「電解コンデンサ」が使われています。体格に対して容量が大きいからです。しかし「電解コンデンサ」は部品寿命が短いというデメリットがあります。
長寿命な「セラミックコンデンサ」や「フィルムコンデンサ」に置き換えればこの問題は解決するのですが、これらは体格に対して容量が小さいため、「電解コンデンサ」からそのまま置き換えると装置が大型化してしまいます。そこで、「電解コンデンサ」を「セラミックコンデンサ」や「フィルムコンデンサ」に置き換えつつも小型化を実現する技術に着目しました。これが私たちの開発した「電解コンデンサレス技術」です。

権瓶

弊社は、2018年に田淵電機を仲間化し、その過程の中で「車載技術」「パワーコンディショナ技術」という両社の強みを生かすために、V2G(Vehicle to Grid)への取り組みに注力することが社長より示され「車と家をものづくりでつなぐ」というビジョンが掲げられました。

畑岸

そのV2Gを推進する上で必要不可欠な技術として、絶縁双方向技術などの開発が進められましたが、電解コンデンサレスについては、しばらく手つかずになっていました。とはいえ、車に搭載するとなれば小型化は必須です。また、V2Gでは常に装置が動作している可能性もあるので、24時間稼動にも耐えられる長寿命化も必ず実現する必要がありました。

権瓶

当時、社内ではV2G推進のための先行開発に10人ほどのチームが動いていましたが、その中から畑岸を含む2〜3人を電解コンデンサレス技術開発チームに任命しました。

畑岸

20代の若いチームで、既に市場に出回っている技術ではなく、もっと斬新で“尖った”技術を開発しようという意気込みが、チームのメンバーにはありました。

ひたすら論文を読み込み、内容を精査し
実用可能な方式を探る日々

開発は、具体的にどのようにして進められたのですか。

畑岸

電解コンデンサレスにもいくつか種類があります。弊社で開発した電解コンデンサレスに関しては、学術界ではさまざまな研究が行われており、いくつもの方式が考案されていましたが、当時はまだ産業界で実用化されていませんでした。そこでまず、電解コンデンサレスに関するさまざまな論文を読み、どんな方式が実用化に適しているかを包括的、網羅的に精査することから始めました。
3カ月くらいかけて、20〜30もの論文を読み込みました。私自身、電解コンデンサレスに関する知識はあまりなかったので、論文を読み込むごとに理解が深まり、この分野の奥深さを知ることとなりました。しかし一方で、中には“研究のための研究”のようなマニアックな論文もあり、そうした内容に引っ張られて方向性を見失わないようにするのが大変でした。
「これは」という方式を見つけたら、権瓶を含むチームの仲間と一緒にどうしたらお客様にご活用いただけるのか、市場の目線も含めて話し合い、試行錯誤を繰り返しながら精査を行いました。そしてようやくシリーズ・スタックド・キャパシター(SSC)という方式にたどり着きました。SSCはサイズがコンパクトで、インバータにも組み込みやすく、電解コンデンサレスとして最適だと思われました。
しかし、「それならなぜ、今まで他メーカーがこの技術を採用しなかったのか?」という疑問が湧きます。その理由は、SSCの制御方式が複雑だったからです。この複雑なSSCをどう制御するかが、新たな課題として浮上しました。そして、再び論文を読み込む日々が始まりました。最適と思われる制御方法をピックアップし、仮説を立て、さまざまな条件下で動作確認を行い、トライ&エラーを重ねました。通勤電車の中でもひたすら論文を読み、24時間ずっとこのことについて考えていた印象があります。結果的に採用はしませんでしたが、この一つの技術で複数の特許の申請をしています。
そしてようやく製品化に向けたデータが揃い、2019年にプレスリリースするに至りました。

はじめて取り組む専門分野の開発。
若手の成長を頼もしく感じる瞬間も

チームを統括する立場として、権瓶さんは開発の推移をどう見ていましたか。

権瓶

“若手を集めて新しい技術にチャレンジしよう”という社長の意向により、V2Gに携わるチームが結成されました。彼らの多くは、このプロジェクトに携わるまでは全く異なる分野で学んできたメンバーで、パワーエレクトロニクスという専門分野の開発に携わるのは初めての経験でした。しかし、先ほども畑岸が言ったように、もともと「“尖った”技術を開発しよう」と意気込んでいたメンバーですから、専門知識の吸収も早く、あっという間にレベルアップしていきました。

畑岸

メンバーはみんな個性的で、生意気だったので、権瓶は大変だったんじゃないかと思っています。かなり我慢しているなという印象がありました。

権瓶

彼らと私では年齢が離れ過ぎているから、気にはならなかった。むしろ、若い彼らの成長を非常に頼もしく感じていました。

予期せぬ分野のメーカーからも問い合わせ
社内の若手育成環境も整備される

プレスリリース後の「電解コンデンサレス技術」の評判は。

畑岸

目指していたアプリケーションは自動車で、自動車メーカー様からは大きな期待の声を頂けたことは非常に嬉しく感じました。自動車メーカー様の多くは現状の車載充電器のコンパクト化を要望しており、「電解コンデンサレス技術」はその要望にも応えられるものです。弊社の最終的な目標はV2Gへの活用ですが、その一歩を踏み出せたと考えています。 また、こちらで想定していなかった、全く異なる分野のメーカー企業からも、プレスリリースやメディアの記事を読んで関心を持っていただき、「これを使ってみたい」とお問い合わせを頂きました。初めてお伺いするお客様も多く、弊社にとっても、私にとってもうれしい誤算でした。

権瓶

「電解コンデンサレス技術」の開発については一段落していますが、V2Gへの搭載という最終的な目標に向けては、今後さらにブラッシュアップをしていかなければいけません。
今回の開発を通してチームの若手は大きな経験をしたと思いますが、最終的に製品として形になって初めて成功体験として完結します。そういう意味ではチームはまだ道半ばであり、今後も引き続きさまざまな試行錯誤を繰り返していくでしょう。
私が若手のころは、このような育成環境がまだ社内にはなく、“尖った”技術を開発する時間もなかった。それをもどかしく感じたことも、正直ありました。現在、社内でこういう環境が整備されたことは、会社としても大きなことだと思います。今後は、こうした育成環境を継承し、彼らに続く次の世代を同じように育成していくことが、会社に求められていると思います。

CTO室の若い技術者は、フェロー達の指導のもと、理論武装、実験による検証、そのフィードバックと、自らの技術を磨いてきました。さらに新たなる技術開発における高い目標を実現するため、寝る時間も削り、粘り強く立ち向かいました。この結果“尖った”技術である「電解コンデンサレス技術」を確立することができました。今後のより一層の活躍が楽しみです。

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